火災後の有害物質の種類と影響は?除去方法も

火災後に残る有害物質は、単に建物の損壊だけでなく、健康にも深刻な影響を及ぼします。一酸化炭素、シアン化水素、多環式芳香族炭化水素、アスベスト、ダイオキシンなど、さまざまな有害物質が発生し、それぞれが異なる健康リスクを伴います。

本記事では、火災後に残るこれらの有害物質の種類と影響、そしてそれらを安全に除去する方法について詳しく解説します。適切な知識と対策を身につけることで、火災後のリスクを最小限に抑え、安全な生活を取り戻す手助けとなるでしょう。

 

1. 火災後に残る有害物質の種類と健康被害

火災後はさまざまな有害物質が建物内に残り、人体に健康被害をもたらします。発火直後だけでなく、消火してからもその場に残り続ける有害物質があるため注意が必要です。

火災後に残る有害物質の種類と健康被害について解説します。

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1-1. 一酸化炭素

一酸化炭素とは、炭素が燃える際、不完全燃焼が起こると発生する気体です。通常は、炭素が燃えると二酸化炭素が発生します。しかし、酸素不足の場合不完全燃焼が起こり、一酸化炭素が生じます。

一酸化炭素は無味無臭のため、空気に混ざっていても気付きにくいのが特徴です。消火後も火災現場に残っている可能性があるため、注意したい危険物です。

人が一酸化炭素を吸い込むと、一酸化炭素中毒を引き起こす危険性があります。一酸化炭素中毒とは、血液中のヘモグロビンが酸素を運ぶ働きを妨害し、脳細胞が酸欠を起こすことです。一酸化炭素中毒は、一息吸うだけで起き、頭痛やめまい、嘔吐、呼吸困難などの症状をもたらします。

一酸化炭素中毒は、人を昏睡状態に陥れる可能性のある危険な症状です。実際に、火災現場で亡くなる人の約3割が一酸化炭素中毒によるものだとされています。

 

1-2. シアン化水素

シアン化水素とは、アクリルやビニール、ポリウレタンなどが燃えると発生する有毒物質です。カーテンやカーペットなど、生活環境のあらゆるものに燃えるとシアン化水素を発生させる素材が含まれています。

シアン化水素を大量に吸い込むと、シアン中毒を引き起こす可能性があります。シアン中毒になると細胞呼吸が妨げられ、具体的な症状として、頭痛やめまい、無呼吸、全身痙攣などが起きます。

シアン中毒は進行速度が早く、意識障害や昏睡など重症となる危険性の高いガス中毒です。そのため、化学兵器や服毒自殺として使われることもある有害物質として知られています。

シアン中毒を含むガス中毒は、火災現場の死因として約4割を占めるとされています。病院にある専門の器具を使った治療のみが有効であり、現場や救急搬送中に対応できないことが多くの人が亡くなる要因です。

 

1-3. 多環式芳香族炭化水素 (PAHs)

多環式芳香族炭化水素とは、有機物が不完全燃焼すると発生する固形物です。発がん性物質を含む有毒なものとして知られ、肺がんとして発症する可能性が高い有害物質です。

揮発性がないため、火災後の空気を吸って体内に入ることはほとんどありません。しかし、ススにくっついて現場に残っている可能性が高いため、火災後も注意が必要となります。

有機物の不完全燃焼として火災現場で発生するほか、ゴムやプラスチック、コーティングなどの柔軟剤や増量剤として使われることもあります。例えば、スニーカーのアウトソールや車のタイヤなど、身近なものに多環式芳香族炭化水素が含有されているのが一般的です。

身近な製品に含まれる多環式芳香族炭化水素は、繊維よりも多くの場所で見つけられることがあります。

 

1-4. アスベスト

アスベストは、石綿とも呼ばれる天然の鉱物繊維です。発がん性のある有害物質で、人が吸い込むと石綿肺や肺がん、中皮腫を引き起こす危険性があります。

石綿肺とは、アスベストの粉塵が肺に広がって跡として残ることです。肺が固くなり、息切れや運動能力の低下などの症状が現れます。中皮腫は、内臓を覆う膜である中皮から悪性の腫瘍が生まれることです。胸痛やせき、呼吸困難などさまざまな症状を引き起こします。

肺がんや中皮腫は長ければ50年の潜伏期間があると言われ、火災後いつ発症するか分からないのが怖い点です。

アスベストは保温、断熱、防音と、建物にメリットのある性質を複数持ち、1970年代から1990年代まで、多くの建造物に使用されました。しかし、現在はアスベストの持つ有害性が認知され、2006年以降アスベストの製造が禁止されています。

そのため、2006年以降に建てられた新しい建物にアスベストが含まれることはありませんが、古い建物が火災に遭った場合は近寄らないよう注意が必要です。

 

1-5. ダイオキシン

ダイオキシンとは、燃えないごみを燃やすと発生する毒性の高いガスです。具体的には、塩素源と炭素源が不完全燃焼することで発生します。

ダイオキシンは発がん性物質を含んでおり、主に肺がんの原因となります。そのほか神経や免疫、生殖に対しても有害です。甲状腺機能や生殖器官の働き、免疫機能が低下するなど、体全体に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。

火災時は、部屋にある塩化ビニールが燃えてダイオキシンが発生することが多い傾向です。塩化ビニールは、おもちゃやラップ、シャンプーボトルなど、日常生活で身近なものに使われています。

火災後に残るススを吸引することで、ダイオキシンは体内に入ります。また、皮膚からの吸収も考えられるため、火災現場に入るときは、防護スーツや手袋、ゴーグルなどの装備が必要です。

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2. 火災後の有害物質の除去方法

火災後、部屋を原状回復するには、有害物質をしっかりと除去しなければなりません。ただし、火が消えても、部屋には危険性のあるガスやススが残っている可能性が高いため、後片付けや清掃には十分注意が必要です。

火災後、自分でできる部屋の掃除方法を紹介します。

1 部屋全体の清掃
ススで黒く汚れた箇所以外にも、目に見えないススの細かな粒子が壁や床に付着しています。初めに部屋全体を軽く掃除しましょう。部屋全体をはたきで叩いてススを落とします。
2 天井から床に降りるように汚れを落とす
はたきである程度のススを落としたら、天井からしっかりと汚れを落とします。低い位置から掃除すると、後で落ちたススをもう1度取り除かなければならないため、必ず天井から床へ降りるように掃除しましょう。雑巾で拭いたり、ブラシでこすったり、汚れの具合に合わせて道具を変えると落としやすくなります。
3 掃除後、喚起する
一通り掃除が終わっても、火災時の焦げ臭さはなかなか取れません。掃除後も、1週間~1か月程度換気を続けることで、部屋に残った臭気を少しずつ外へ出すことができます。

軽度の火災であれば、上記のとおり自分で掃除することも可能です。しかし、リフォームが必要な大規模火災被害があるときは、迷わず専門の火災現場清掃業者へ依頼することをおすすめします。

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2-1. 業者に依頼するメリット

住宅火災の有害物質の除去を業者に依頼することは、下記のとおりさまざまなメリットがあります。

  • 短期間で効率よく部屋を原状回復できる
  • 精神的・肉体的な負担が少ない
  • 有害物質や汚れにあった清掃方法で、確実に除去作業をしてもらえる
  • 有害物質が残っていないか専門の道具で濃度測定してもらえることがある

大きな火災発生後は部屋の汚れや火災臭がひどく、住める状況ではありません。できるだけ短期間で火災現場復旧をするためには、プロの清掃サービスで効率的に進めることが重要です。清掃やごみ捨てなどの精神的・肉体的負担がなくなるのも、大きなメリットといえます。

また、自分で掃除すると、有害物質を除去しきれなかったり、清掃中に有害物質を吸い込んでしまったりとリスクを伴います。有害物質に応じた最適な方法で、火災復旧作業をしてもらえるのは、業者ならではのポイントです。

 

まとめ

火災後にはさまざまな有害物質が残り、それぞれが異なる健康リスクをもたらします。一酸化炭素中毒やシアン中毒、多環式芳香族炭化水素による発がんリスク、アスベストによる肺疾患、ダイオキシンによる全身への影響など、火災後の清掃には十分な注意が必要です。

自分で対処できる範囲を超える場合や、大規模な火災被害がある場合は、専門業者への依頼が安全で効率的です。正しい知識と適切な対策を講じることで、火災後の健康リスクを最小限に抑え、早期の原状回復を目指しましょう。

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