延焼と類焼の違いは?泣き寝入りしない方法や火災保険の重要性を解説

火災が発生した際、ニュースなどで「延焼」や「類焼」という言葉を耳にすることがあります。しかし、この2つは似ているようで意味が異なり、損害賠償や補償の扱いにも関わってきます。実際には、隣家からのもらい火で自宅が被害を受けても火元に損害賠償を請求できないケースが多く、泣き寝入りになってしまうこともあります。そこで重要になるのが火災保険です。

当記事では、延焼と類焼の違いや損害賠償の可否、火災保険による補償の仕組み、さらに消防活動で被害を受けた場合の対応を解説します。

 

1. 延焼と類焼の違いは?

火災に関する用語として「延焼」と「類焼」があります。どちらも燃え広がりを表す言葉ですが、建物内部で広がる場合と、周囲の建物へ広がる場合とで意味が異なります。以下では、それぞれの言葉の使われ方を詳しく解説します。

 

1-1. 延焼とは

延焼とは、火事が起きた火元から火が広がり、同じ建物内や隣接する住宅などへ被害が拡大していくことを指します。出火した建物だけでなく周囲の建物や施設も巻き込むため、被害の範囲が大きくなるのが特徴です。

ニュースでは「火は隣家に延焼しました」といった形で使われ、火の広がりの状況や経過を示す言葉として用いられます。つまり延焼は火災が拡大していく「状態や現象」を指す表現であり、防火対策や建物の構造などと深く関わる用語です。

 

1-2. 類焼とは

類焼とは、火元ではない自宅や建物が、他所で発生した火事から燃え移って焼けてしまうことを意味します。たとえば隣家で火事が発生し、火の粉や炎が飛んで自宅に着火した場合などが典型的です。

ニュースでは「隣家が類焼しました」と表現され、延焼によって被害を受けた結果を伝える際に使われます。延焼が火の広がりの「経過」を示すのに対し、類焼はもらい火によって焼ける「事実」を示す点が大きな違いです。つまり、延焼は加害の側面から、類焼は被害の側面から火災を捉える言葉です。

 

2. 延焼・類焼は損害賠償請求できる?

火事による延焼や類焼で被害を受けた場合、必ずしも火元に損害賠償を請求できるとは限りません。隣家からのもらい火や、自分が火元となった場合の責任の有無は、過失の有無や程度によって異なります。ここでは損害賠償の基本的な考え方を解説します。

 

2-1. 延焼・類焼による被害を受けた場合

隣家からの延焼や類焼で自宅が被害を受けた場合でも、火元に損害賠償請求はできません。これは「失火責任法(失火法)」によって、故意や重大な過失がない限り、火元は法律上責任を負わないと定められているためです。

出典:e-GOV法令検索「明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)」

この背景には、木造家屋が密集していた明治時代の事情があり、火災で自宅を失った火元にさらに多額の賠償を求めるのは酷だと考えられたことが影響しています。現在もこの法律は有効であり、被害を受けても加害者からの補償は期待できません。

そのため、延焼・類焼による被害に備えるには、自分の火災保険で補償を受けられるようにしておくことが重要です。火災保険の基本補償で対応可能ですが、不足分に備えるためには「類焼損害補償特約」を検討するのも有効です。

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2-2. 火元に故意・重大な過失があった場合

延焼や類焼による損害は、原則として失火責任法により火元へ損害賠償請求できません。しかし、火元に故意または重大な過失があった場合はこの法律の適用外となり、賠償請求が可能です。重大な過失とは、「わずかな注意をすれば火災を予見・防止できたのに、著しく注意を怠った状態」を指し、寝たばこや天ぷら鍋を火にかけたまま離れるなどが典型例です。

一方、仏壇のろうそくが倒れた失火やコンセントのトラッキング現象による火災は重過失と認められない場合もあります。なお、軽過失での失火は失火責任法が適用されるため賠償請求はできません。またガス爆発事故は失火責任法の対象外とされるため、過失の有無にかかわらず賠償請求できる点には注意が必要です。

 

2-3. 自分が火元になった場合

自分が火元となってしまった場合でも、故意や重大な過失がなければ失火責任法が適用され、隣家に火が燃え移っても法律上は損害を補償する義務はありません。ただし、火事を起こした側として何もせずにいるのは心情的に難しく、多くの人が道義的な責任を感じるものです。

そうしたときに役立つのが火災保険の特約です。「失火見舞費用保険金」を付帯していれば、隣家へのお見舞いや謝意を示す費用を補償できます。また「類焼損害補償特約」に加入していれば、隣家に損害が及んだ場合でも一定の補償を行うことが可能です。法律上の賠償義務はなくても、保険を通じて誠意を示すことができるため安心です。

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3. 延焼・類焼で火事になった場合でも泣き寝入りしない方法

延焼や類焼によって自宅が被害を受けた場合でも、火元に損害賠償を請求できないのが原則です。泣き寝入りしないためには、自分や火元の火災保険でどのような補償が受けられるかを把握しておくことが重要です。

ここからは、火災保険による具体的な補償内容について解説します。

 

3-1. 自分の火災保険による補償

火災保険は、失火や隣家からのもらい火による損害も補償の対象となるため、延焼や類焼で自宅が被害を受けても補償を受けられます。さらに火災だけでなく、落雷・破裂や爆発・風災や水災・盗難など幅広いリスクをカバーしているのが一般的です。契約内容によっては地震保険を付帯することで、地震による損害にも備えられます。

また、火災保険は「建物のみ」「家財のみ」「建物と家財の両方」から選択可能で、家具や家電なども対象に含められます。賃貸では家財保険のみで対応でき、持ち家の場合は建物と家財を合わせて補償範囲とするのが安心です。

 

3-2. 火元の火災保険(類焼損害補償特約)

隣家からのもらい火で被害を受けた場合、通常は火元に損害賠償を請求できず、自分の火災保険で対応するのが原則です。しかし、火元が「類焼損害補償特約」を付帯していれば、被害者が加入している火災保険だけでは補償しきれない不足分を受け取れる場合があります。

類焼損害補償特約は法律上の賠償責任がない状況でも支払われるのが特徴で、延焼させた側が道義的な責任を果たす手段としても利用されます。補償額は再取得価額を基準に算出され、受取人は被害を受けた隣家となります。加入状況によっては利用できない場合もあるため、火元・被害者双方にとって安心につながる制度と言えるでしょう。

出典:損保ジャパン「特約」

出典:東京海上日動「【火災保険】 類焼損害補償特約とはなんですか?」

 

3-3. 火元の火災保険(失火見舞費用保険金)

隣家からの延焼で被害を受けた場合、火元に損害賠償を請求できないのが原則ですが、火元が火災保険に「失火見舞費用保険金」を付帯していれば、お見舞金として補償を受けられることがあります。

失火見舞費用保険金は、火災や爆発、消防活動などで近隣に損害が及んだ際、法律上の責任の有無にかかわらず支払われる制度です。たとえば、自宅の火災で隣家が水浸しになった場合も対象となり、1世帯あたり30万円を上限に補償されます。延焼させられた側にとっては経済的な支えになり、火元にとっては誠意を示す手段となります。加入状況に左右されますが、被害者・加害者双方にとって安心につながる仕組みです。

出典:三井住友海上「【火災保険】失火見舞費用特約とは何ですか?」

出典:東京海上日動「【火災保険】失火見舞費用保険金はどのような場合に支払われますか?」

 

4. 近所の消防活動で被害を受けた場合の補償は?

近隣で火災が起きた際、消防活動によって自宅が放水されたり壁を壊されたりすることがあります。こうした行為は消防法第29条第1項に基づき適法とされ、原則として消防機関や火元に損害賠償を請求することはできません。例外的に延焼の恐れがないのに破壊された場合などは補償を受けられますが、その額は時価が基準となり十分でない場合もあります。

出典:e-GOV法令検索「消防法」

一方、火災保険では消防活動による水濡れや破壊の損害も補償の対象に含まれます。さらに損害拡大防止費用保険金として消火薬剤や修理費用なども支払われるため、予期せぬ被害に備えるには火災保険への加入が有効です。

出典:東京海上日動「【火災保険】保険の対象となる建物内で火災が発生し、火災による損害と消火活動による水濡れ損害が発生しました。消火活動により発生した水濡れ損害も補償されますか?」

 

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火災で自宅が延焼・類焼の被害を受けても、失火責任法により火元へ損害賠償を請求できないのが原則です。ただし火元に故意や重大な過失があれば賠償請求が可能となり、自分が火元でも保険特約を通じて隣家に償いができます。

泣き寝入りを避けるには、自分の火災保険で建物や家財を補償し、必要に応じて類焼損害補償特約や失火見舞費用保険金を付帯することが重要です。消防活動での水濡れや破壊も火災保険で補償対象となるため、契約内容を確認し備えておくことが安心につながります。

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