失火責任法とは?重過失が認められるケースや火災保険の重要性を解説

入居している物件や貸し出している物件で火災が起こった場合、借主や貸主が知っておきたい法律の1つに「失火責任法」があります。失火責任法とは、「火災を起こして隣家へ火が燃え移ったとしても、重大な過失がなければ失火者は賠償しなくてよい」という内容の法律です。日本には木造家屋が多いため、火災によって火が燃え広がりやすいことを鑑みて失火者の賠償責任を限定する趣旨で制定されました。

当記事では、借主や貸主が知っておきたい失火責任法で定められた責任の範囲や重過失と認められるケース・認められないケース、火災保険の重要性について解説します。

 

1.火災における失火責任法とは?

失火責任法とは、失火した際の責任について定めた法律です。1899年(明治32年)に定められた短い法律で、正式名称を「失火ノ責任ニ関スル法律」と言います。失火責任法では、火災を起こして大きな被害が起きても、重大な過失がなければ失火者は賠償しなくてよいとしてます。

出典:e-Gov法令検索「明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)」

火災が起こると、近隣の住宅を巻き込むトラブルに発展することも少なくありません。延焼して近隣の建物や家財を焼失させてしまうケースもあるでしょう。しかし、失火責任法があるため、軽いうっかりで火を出した場合は損害賠償の義務は生じません。

仮に、隣家の出火で自宅が類焼したとしても、火元の家主に重大な過失はなかったと判断されると何も賠償してもらえない可能性があります。

 

1-1.損害賠償責任を問えるのは重過失のみ

もう少し詳しく失火責任法について見てみましょう。失火責任法は一文からなる短い法律で、全文は下記の通りです。

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

引用:e-Gov法令検索「明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)」引用日2024/03/17

上記を訳すと「民法第709条の規定は失火には適用しない。ただし、重大な過失があった場合を除く」となります。民法第709条は、故意でも過失でも他人の権利を侵害した者は、不法行為による損害賠償の責任を負うとする決まりです。

出典:G-GOV「明治二十九年法律第八十九号 民法」

つまり「他人に損害を与えたら賠償責任が生じるが、火災では生じない。ただし、重過失があればその限りでなく、失火者に損害賠償の義務が生じる」という意味です。

重過失とは「わずかでも注意していれば予見でき、避けられた事柄を漫然と見逃した状態」を指します。一般に、わざとかと思うようなレベルで危険に対する注意力が欠如した状態になければ、重過失とはみなされません。

 

2.失火責任法で重過失と認められるケース

これまでに、失火責任法で重過失と認められたケースには、以下のようなものがあります。

  • 石油ストーブの火がついたままタンクに給油し、蓋を閉めず収納しようとして石油が漏れて着火、火災が起きたケース
  • リスクを認識しながら寝ころんでたばこを吸い、眠ってしまって火事になったケース
  • 火がついた石油ストーブから75cmの距離に蓋をしていないガソリン入りの瓶を置き、瓶が倒れて火災が発生したケース
  • わらが散乱した場所にたばこの吸い殻を捨て、火がついて燃え広がったケース
  • 電気コンロをつけたまま眠り、ずり落ちた毛布に引火して火災が発生したケース
  • 火災注意報が発令されている状況において、大量のかんな屑が放置されている裏庭で焚火し、かんな屑に火がついて火災が起きたケース

いずれも、火の近くで燃えやすいものを無造作に扱ったり燃えやすい状況で火をつけたりしており、火事のリスクが容易に予測できるケースです。通常払うべき注意を怠ったとして、重過失が認められました。

ただし、類似のケースでも、状況次第で重過失とみなされる場合もあれば、みなされない場合もあります。そのため「このケースでは確実に重過失と認定される」とは一概に言い切れません。

 

3.失火責任法で重過失と認められないケース

過失があっても、その内容や状況によっては重過失と認められないケースもあります。たとえば、以下のようなケースです。

  • 焚火をした後に水をかけて30分ほど様子を見て、火が消えたと考えてその場を離れた後に発火して火災につながったケース
  • 閉め切って風が入らない室内でストーブをつけていて、カーテンを隔ててストーブの側面から14cm離れた場所に置いていた灯油に引火したケース
  • 暖炉の火がほとんど燃え尽き、周囲にも燃えやすいものは置いていない状態で家人が外出したところ、暖炉の火が原因で火災になったケース

いずれも、火が出ないよう通常の注意を払っていたり、火災が起こるとは予見しづらかったりするケースであり、重過失があったとはみなされていません。

 

4.失火責任法の重過失以外で賠償責任が発生する場合は?

重過失がなくても、火災を起こしたときに失火者に賠償責任が生じるケースがあります。賃貸物件の入居者が火事を起こしたケースやガス爆発で延焼したケースなどです。

ここでは、それぞれのケースを具体的に解説します。

 

4-1.賃貸物件が火元の延焼

賃貸物件で入居者が火災を起こして隣家に損害を与えても、重過失がなければ損害賠償の責任は発生しません。ただし、大家に対しては事情が異なります。

入居者には、大家に対する「原状回復義務」があります。原状回復義務とは、故意や過失によって部屋に傷や汚れをつけたときは、元通りに直してから返すとする義務のことです。ただし、経年劣化による傷みについては入居者が現状回復しなくても構いません。

部屋でたばこを吸い続けてクロスに臭いが染みついたり、家具を移動した際にフローリングに大きな傷をつけたりした場合に、元通りにする義務を負います。

しかし、部屋や設備が火事で焼失したら、借りたときの状態に戻すことは難しいでしょう。その場合、入居者は原状回復義務が履行できません。債務不履行に相当するとして、大家に対して損害賠償を行う必要が生じます。

 

4-2.ガス爆発による延焼

ガス爆発を起こして火災が発生した場合、失火が原因ではないので失火責任法の適用対象外です。ガス爆発とは、たとえば以下のようなケースです。

  • ガス漏れに気づかずにコンロを点火してしまい、引火して爆発したケース
  • カセットコンロを2台並べ長い鉄板を置いて調理していて、ボンベが過熱により爆発したケース
  • 上にカセットコンロを置いていたIH調理器の電源が誤って入り、過熱によってボンベが爆発したケース

失火責任法が適用されないので、与えた損害を賠償する義務が生じます。損害賠償が高額になる恐れがあるので、保険に加入して備えておくと安心です。

 

5.失火責任法と火災保険の重要性

どれだけ火の扱いに注意していたとしても、隣家が火災を起こせば自宅が類焼する可能性は十分にあります。自宅が火事になれば、片付けや建て直し、家電・家具類の新調など、生活を再建するのに多額の費用がかかるでしょう。

ところが、失火責任法が適用されると、火元である隣家からの賠償はほとんど望めません。自己負担で直すとなると大きな出費が必要になるでしょう。その際、火災保険に加入していれば、被害に遭った住宅や家財が補償されます。

また、自宅が燃えて隣家に被害を与えた場合、失火責任法が適用されて法律上は賠償しなくてよくなったとしても、心理的な負担は大きいでしょう。火災保険によっては、特約で契約者自身が火元になった際に、近隣に保険金や見舞金を支払う補償を備えているものもあります。

保険商品によって補償内容が異なるので、加入にあたってはよく比較検討して決めることが大切です。

 

6.火災に遭った場合は火災現場の専門会社「アイコム」へ

火災に遭ったときには、以下の手順で手続きを進めましょう。

1 罹災証明書の取得
(公的な被災者支援制度を利用する際や保険金を請求する際に必要)
2 保険会社への連絡
3 水道や電気などライフラインの停止連絡
4 (自分が火元の場合)近隣に説明とお詫び
5 家の片付けを業者に依頼

火災後の家の片付けは煤対策や消臭・消毒、燃えた家財の処分などが必要なため、自力で行うのは困難です。専門の業者に依頼したほうがよいでしょう。

アイコムは、火災現場の後片付けから解体・リフォームまでワンストップで対応できる火事現場の専門会社です。豊富な経験を元に火事現場の片付けをスムーズに実施し、自宅のリフォームや売却にも対応可能です。火災後の家の片付けや消臭、原状回復でお困りの場合は、お気軽にアイコムまでご相談ください。

火災現場の片付け・消臭・現状回復は「アイコム」へ

 

まとめ

失火責任法とは、「火災が発生して隣家に火が燃え移ったとしても、重過失が認められなければ失火者は賠償しなくてもよい」という趣旨の法律です。基本的には、注意していれば予見でき、避けられた事柄を漫然と見逃した状態であれば重過失とみなされるでしょう。

ただし、賃貸物件が火元の延焼であれば、入居者は原状回復義務によって大家に対する賠償責任を負います。ガス爆発を起こして火災が発生した場合も失火責任法の適用対象外となり、個人賠償責任義務が生じます。

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