火事になったらどうすればいい?鎮火後の手続きや公的支援についても

一軒家やマンション、お店などで火災が起きたら、慌てずに一刻も早い避難と消防署への通報、周囲の住民への周知や初期消火を行うのが原則。ここまでは多くの方が常識として認識していることですね。ところがその後、火事現場の当事者が何をすべきなのか、知っていますか?

今回は家や会社など自分所有の不動産が出火元となったとき、鎮火後にやるべき各種手続きや方法について紹介します。いざというときのためにも、ぜひ参考にしてください。

 

1.火事になったらどうすればいい?鎮火後すぐに必要な手続き

火事になった際、はじめにとるべき行動は消防署への通報。消防車が来るまでの間、火が小さなうちは消化器などを使って自力で初期消火することも大切ですが、火や煙が天井まで達するなど危険を察知したら、安全第一に一刻も早く逃げることを優先しましょう。

消火活動の最中には、調理中の油やたばこやストーブなどの不始末ではないのか、ガス栓の閉め忘れはなかったか、あるいは放火が疑われないかなど、あらゆる出火・発火原因の可能性を、消防隊員や警察官に事情説明することになります。鎮火後には消防隊員などによる火災調査への立ち会い。出火原因や炎が上がった時の状況、火災による死傷者の有無、建物の損害状態などについての確認が行われます。

鎮火後は後片付けになりますが、その後片付けにも証明書関連の書類等が必要になるため、片付けの前に各種事務手続きを行いましょう。ここからはそれら手続きと使い方について詳しく解説してゆきます。

1-1.罹災証明書の取得

火災後、最初にやるべきことは罹災証明書の申請です。罹災証明書とは災害対策基本法に基づいた火災による被害の程度を証明する書類。火災保険金請求や火災現場のごみ処理費用の減免などに必要な書類で、こちらから申請しなければ発行されません。

申請後も自治体職員による現地調査が行われ、被害状況の判定が出るまでに時間を要するため、発行には数日から2週間程度かかります。そのほかの手続きをスムーズに進めるためにも、罹災証明書は火災調査が終了した後、すみやかに申請することをおすすめします。

1-2.火災保険会社への連絡

火災保険に加入している場合は、保険会社に連絡して火災保険金の請求を行いましょう。罹災証明書を取得してから保険会社へ連絡すると手続きがスムーズですが、発行までに時間がかかる場合は、その間に保険会社へ連絡するなど臨機応変に手続きを進めましょう。ちなみに、自分が火災保険に加入しているか否か、更新したかどうか覚えていない場合は、住宅ローンを借りた銀行やハウスメーカーに問い合わせてください。

1-3.電気・ガス・水道などライフラインの停止

火災後は各種ライフラインの使用停止も必要。火災が発生した際は、通常ガス漏れによる爆発を防ぐために、消防署からガス会社に連絡が入りますが、固定電話や電気、水道については、自身が連絡を入れない限り相手方の会社も火事の情報を把握していませんので、忘れないように注意してください。

使用停止の連絡が必要なライフライン

  • 電話(固定電話)
  • 電気
  • 水道
  • ガス

また、火災に関係する書類や再発行したカードなどの郵便物は、指定の郵便局に届くよう、必ず転送届を出しておきましょう。

 

1-4.解体工事の依頼

火災で自宅が全焼・半焼すると、解体業者に解体工事を依頼することになります。解体業者に解体工事を依頼する際は、見積もりだけでなく作業の流れも提示してもらいましょう。

火災現場の解体は、ごみなどを分別しながらの作業になるため、通常の解体作業よりも手間も時間もかかり、そのぶん費用も高くなる傾向にあります。費用を抑えるためには一般の家庭ごみとして廃棄できるものは、そちらで処分し、有料の産業廃棄物をできるだけ少なくしておくことがポイントです。火災ごみを家庭ごみとして廃棄するには、罹災証明書を提示して都道府県の関係部署と協議する必要があるため、管轄の自治体に問い合わせましょう。

2.焼失した重要書類・貴重品などに関する手続きも必要

火災で重要書類や貴重品などが焼失した場合、届出や再発行などの手続きが必要になります。以下では、届出や再発行など手続きが必要な重要書類・貴重品の種類を、申請場所別にリスト化しました。

印鑑登録証 役所
実印 役所
マイナンバーカード 役所
保険証(国民健康保険) 役所
年金手帳(第1号被保険者) 役所
運転免許証 警察署
保険証 勤務先
年金手帳(第2号被保険者) 勤務先
年金証書 年金事務所
年金手帳(第3号被保険者) 年金事務所
預金通帳 銀行
キャッシュカード 銀行
燃えた現金の引き換え 銀行

重要書類・貴重品の届出や再発行には、どの施設や関係部署でも基本的に本人確認書類が必要です。本人確認書類も焼失している時は、役所で住民票を発行してもらい、身分証として使用できる運転免許証などの再発行手続きを進めるといいでしょう。

本人確認書類の再発行が完了したら、優先度の高いものから順番に再発行手続きを行ってください。例えば、通院の必要がある人は保険証の再発行から進めるとよいでしょう。

 

3.火事になった時に受けられる公的支援・減免

火災に遭った際、火災保険に入っている人は補償範囲で火災保険金を受け取れます。しかし、火災保険に入っていない人でも、公的支援や減免制度を受けることは可能です。自治体によっては独自の制度が設けられているケースもあるため、確認するとよいでしょう。

ここからは、被災時に受けられる公的な支援について、代表的なものを4つ紹介します。

 

3-1.災害見舞金制度

災害見舞金制度とは、火災や事故などの人為的災害、自然災害などで被害に遭った人に見舞金の支給が行われる制度です。見舞金の支給額は自治体によって異なり、火災が原因で入院した場合は追加の見舞金が支給されるケースもあります。

災害見舞金制度を利用する際は、市役所で災害見舞金申請書を記入し、罹災証明書、医師の診断書と一緒に提出しましょう。

栃木県宇都宮市の場合、災害見舞金の支給額は下記の通りとなっています。

被害の内容 支給額
住宅の被害 全焼・半焼、流出 10万円
半壊・半焼、半埋没、床上浸水 5万円
し尿の汲み取りを自費で実施した場合 4,400円
人的被害 死亡(1名あたり) 10万円
重症(1名あたり) 5万円

出典:宇都宮市「災害見舞金制度」

 

3-2.一般廃棄物処理費用減免制度

一般廃棄物処理費用減免制度とは、火災ごみなどの処分費用を一部あるいは全額免除する制度です。

火災ごみの運搬処分にかかる費用は高額になりがちですが、その負担を軽くしてくれるのが、一般廃棄物処理費用減免制度。これを利用すれば火災ごみの処理手数料が減り、被災者は経済的損失を最小限に抑えられます

一般廃棄物処理費用減免制度の有無や免除の程度は自治体によって異なります。茨城県小美玉市の場合は、火災ごみの処理手数料が全額免除となります。

出典:小美玉市「一般廃棄物処理手数料の減免制度 」

 

3-3.災害減免法

災害減免法とは、災害によって損害を受けた住宅・家財の純損害額が住宅・家財の価額の2分の1以上かつ、被災した年の所得金額の合計額が1千万円以下の人が受けられる制度です。

出典:国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」

被災者の経済的な負担を減らすために、火災に遭った年分の所得税額が軽減もしくは免除されます。この減免措置を受けるには、確定申告書等に災害減免法の適用を受ける旨と被害状況、損害金額を記載して税務署に提出してください。

 

3-4.雑損控除

雑損控除とは、納税者や扶養家族の資産が損害を被った場合に使える所得控除制度です。火災や地震、自然災害のほか、盗難や横領についても適用されます。

出典:国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」

雑損控除の対象となるのは、生活に必要な資産です。住宅や家財、自動車などは対象となりますが、保養目的の別荘や、1個あるいは1組30万円を超える貴金属・絵画・骨董などは対象外となります。

 

4.火災現場の解体工事を依頼する業者の選び方

火災現場の解体を依頼する際、闇雲に解体業者を選ぶと高額な費用を請求されたり、騒音や埃などの対策がしっかり行われず、近隣住民とトラブルに発展したりするケースがあります。

火災現場の解体業者を選ぶときは、複数の業者に見積もりを取ることがおすすめです。1社のみの見積もりで決めると、見積書の金額が高いのか安いのか判断できませんが、複数業者に見積もりを依頼すれば適切な費用相場が見えてくるでしょう。また、実績のある専門業者に依頼すると安心できます。

 

まとめ

管理する物件や住んでいる一軒家、マンションなどが火事になったら、まずは消防署へ通報し、水や消化器での初期消火が不可能な時は迅速に避難するのが基本です。鎮火後は、火災による被害の程度を証明する罹災証明書を被災場所を管轄する消防署で取得します。そのほか、火災保険会社へ保険金請求の連絡を行い、ライフラインを契約している各社に停止連絡を入れましょう。

また、近隣住民へのお詫びは極力早めに行ってください。突然の不幸に見舞われたあげく、山のような手続きをこなさねばならず、精神的にも肉体的にも疲弊しきっているでしょうが、ご近所の方にご迷惑をかけたことへ心からの謝罪は、今後も同じコミュニティで暮らしていくには必要なことです。

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