火事に遭った建物の解体費用の相場は、住宅の広さやタイプ、火災状況によっても異なりますが、少なく見積もって約100万円から、多い場合で約500万円が目安となります。内訳は基本解体費用、人件費、諸経費など。解体工事を検討するときは、住宅や店舗の広さやタイプを鑑みて費用を想定するとよいでしょう。
今回は火事に遭った建物の解体費用の相場をはじめ、解体費用の内訳、費用を安く抑える方法などを紹介します。万が一の事態に見舞われた際に戸惑うことがないよう、参考にしていただけたら幸いです。
1.火事に遭った建物の解体費用相場
火事に遭った建物の解体費用(解体工事費用)の相場は、約100万~500万円。金額に幅があるのは、住まいの広さやタイプ、火災状況によって費用が異なるためです。例えば40坪ほどの木造住宅であれば約150万~250万円が相場。同じ40坪の広さでも、鉄筋コンクリートビルの場合は約300万~350万円、もしくはそれ以上の費用が見込まれます。
2.火事に遭った建物の解体費用の内訳
ひとくちに「解体費用」と言っても、その中には数種類の費用が含まれています。費用の内訳を把握しておくことで、業者の見積もりが適正かどうか判断するのに役立ちます。費用をできる限り安く抑えるためにも、各費用について理解した上で業者に相談しましょう。
ここでは、火事に遭った建物の解体にかかる費用について、項目ごとに解説します。
2-1.基本解体費用
基本解体費用とは、解体作業にかかる基本的な費用のこと。「1坪あたりの解体費用×坪数」で計算するため、首都圏や都市部のように坪単価が高いエリアほど基本解体費用は高額になります。
住宅の種類ごとの坪単価の平均は、下記の通りです
木造 | 約2万~4万5千円 |
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鉄骨造 | 約4万~5万5千円 |
鉄筋コンクリート造 | 約4万5千~6万円 |
例えば、40坪の鉄骨造住宅で坪単価が4万円であれば、「4万円×40坪=160万円」が基本解体費用となります。ただし、上記の金額は平均であるため、あくまで目安としてください。
2-2.人件費
人件費は、解体工事に取り組む作業員にかかる費用です。地域によって金額は変動するものの、他の費用と同様に首都圏や都市部ほど高くなりやすい傾向にあります。
人件費の相場は、作業員1人分で1日あたり約1万~2万円です。30~40坪の住宅であれば、3名程度で7日間ほどの作業を要するため、作業員1人分の人件費を1万円とすると、人件費の合計は「1万円×3名×7日=21万円」です。
2-3.産業廃棄物処理費
産業廃棄物処理費は、解体した家を処分するための費用です。火事にあった建物の解体工事によって生じたゴミは、産業廃棄物として専用の処分場へ運搬する必要があり、通常の解体工事よりも費用がかさむ傾向にあります。
産業廃棄物処理費の相場は、解体費用の総額の約10~20%です。ただし、解体工事をする場所によっては、運搬費が高額になる場合もあります。
2-4.諸経費
火事にあった建物の解体を業者に依頼する際は、諸経費として下記の費用がかかる場合もあります。
【解体工事にかかる諸費用の一例】
- 防音対策費用
- 重機の駐車費用や燃料費用
- 足場設置費用
- 家を養生する費用
- 役所に提出する書類の作成費用
- 近隣への粗品費用
など
上記の通り、火事になった建物の解体には、さまざまな費用が発生します。業者によって対応可能な業務が異なるため、複数の業者に見積もりを依頼し、各社の諸経費の詳細を確認しましょう。
2-5.付帯工事費
付帯工事費とは、建物の解体に伴って、樹木やブロック塀、駐車場など付帯するものの撤去にかかる費用です。建物の中に置き去りにした家具など残置物の処分に、付帯工事費が発生する場合もあります。
火事になった建物の解体工事は、あくまで建物本体の解体が中心であるため、付帯工事費が高額になるケースは多くありません。ただし、付帯工事をする対象の広さや量によって金額は異なるため、まずは業者に問い合わせることが必要です。
3.火事現場の解体費用を安く抑えるためには?
火事現場の解体費用は、高額になりやすい傾向にあります。費用負担を軽くするためには、火災関係の補助制度や保険金を利用したり、金額が決定する前の段階で見積もりを取ったりするなど自分なりにできることをするとよいでしょう。
ここでは、火事現場の解体費用を抑えるために、とくに効果的な3つの方法について解説します。
3-1.火災保険を利用する
火災保険に加入している場合、加入元の会社に申請して審査に通れば保険金が支払われます。保険金には「損害保険金」と、災害など臨時の出費に充てることができる「臨時費用保険金」の2種類がありますが、火災による建物の解体費用は「損害保険金」を利用することになります。
なお、保険金の支払いには、消防署や警察とは別に保険会社独自の現地調査が必要になります。保険会社の現場検証の前に解体工事を行うと、保険金額の算定ができない、支払うことができないケースが出てくるため、必ず工事前に罹災証明書を添えて、保険金請求の手続きを行いましょう。
3-2.自治体の補助制度を活用する
自治体によっては、火災被災者を対象とした補助制度を用意しています。ここでは、代表的な補助制度である「災害見舞金」と「廃棄物処理手数料の減免」について紹介します。
●災害見舞金
火事や台風などの災害により住宅を失った人を補償するための補助金です。金額は自治体によって異なりますが、和歌山県田辺市を例に挙げれば、全焼・全壊で1世帯あたり5万円、半焼もしくは大規模半壊で1世帯あたり3万円が支給されます。また、自然災害によって被害を受けた場合は、それぞれ支給額が上がります。
出典:田辺市「災害見舞金」
●廃棄物処理手数料の減免
多くの自治体には火災や天災などの被災者を対象に、廃棄物の処分費用の一部または全額が免除される減免制度があります。自治体によって異なりますが、横浜市では被災者自身が処分施設に搬入する場合を条件に、1kgあたり13円の一般廃棄物処理手数料を免除しています。減免対象はあくまで手数料のみで、運搬費用などは全額の支払いとなります。
3-3.複数の業者に見積もりを取る
解体工事にかかる費用は業者によって異なるため、複数社に見積もりを出してもらうことが大切です。各業者の金額や作業項目を比較することで、相場がわかるうえ、作業内容を把握することができます。早めに解体工事を始めたい気持ちはあるかもしれませんが、なるべく多くの業者から見積もりをもらことが、費用を低く抑えるコツです。
見積もりを依頼する際は、費用の項目をできるだけ細かく出してもらいましょう。こうすることで、業者ごとに工事の内容を把握することができ、後から想定外の費用が発生することも防げます。
4.火事現場の解体で後悔しないための注意点
ここでは、火事現場の解体で後悔しないためにおさえたい3つの注意点を以下にまとめました。
解体までの流れを把握しておく |
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解体までの流れは基本的に下記のようになっています。
あらかじめ上記の流れを理解しておくことで、解体完了までをスムーズに進められるようになります。 |
許認可を受けている業者を選ぶ |
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建設業あるいは解体工事業の許認可を受けている専門業者かどうかを確認してください。許認可を受けていない場合、悪徳業者である可能性を否定できないため、依頼は避けるようにしましょう。 |
マニフェストを発行している業者を選ぶ |
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マニフェストとは、産業廃棄物を処分する際の流れについて記載したものです。産業廃棄物を処理する業者は必ずマニフェストを発行するので、トラブルを防止するために事前に確認するとよいでしょう。 |
良い解体業者選びの主なポイント
火災物件の解体作業は、普通の住宅の解体と異なるノウハウや技術が必要です。良い解体業者を選ぶためにも次のポイントを抑えて、業者の選定を行いましょう。
ポイントの1番目は「被災者の立場に立った適切なアドバイスと説明をしてくれること」。解体作業の際、大量のゴミを廃棄なければなりませんが、解体作業で発生したごみは産業廃棄物として処分すると高額な費用がかかります。しかし、消防署が発行する罹災証明書を提出して自治体に申請すれば、処理費用が割り引きされます。この罹災証明書は、火災保険金の請求や税金の減免の際にも必要となる重要な書類ですが、自己申告しなければ発行されません。良い業者であれば当然「罹災証明書」を申請することを説明してくれるはずです。
ポイントの2番目は「産業廃棄物の排出責任者として適切な仕事をしてくれるか否か」。火災現場には燃えかすや焦げた残骸、消火活動で水浸しになって残置物、焼けて崩れ落ちた内装材や天井などが散乱しています。これらの廃棄物は有害物質を含むものがあり、一般のゴミとして出すことができません。火災現場の解体業者は産業廃棄物の排出責任者の任を果たさねばならないこと法律で決まっています。自治体によっても分別方法や処分方法の扱いが異なるため、そうした詳細な説明を丁寧に行ってくれるかどうかが、優良な業者を見極めるポイントのひとつといえるでしょう。
ポイントの3番目は「火災現場の有害物質を除去するノウハウと技術、安全に取り扱うための知識をもっていること」。火災現場には、たびたびダイオキシンやアスベストなど有害物質が残存しています。これら火災現場の有害物質を外部に漏らさないよう、解体・片付け作業の際は現場建物の密閉、有害物質の飛散防止対策、現場の出入りの際のエアシャワー設置など、周辺環境や住民の健康を害さないための配慮など適切な措置が求められます。こうした正しい知識と高い技術は、火災現場専門の解体業者にとっては必須。一般の解体業者との違いはここにあります。
ポイントの4番目は「解体事業者の登録をしていること」。火災現場の解体作業は焼け崩れそうな建物や有害物質を扱うために危険が伴います。また、火事現場によっては特別管理産業廃棄物の処理が必要なため、通常の産業廃棄物より厳しい基準が設けられている特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可証を持っているか、もしくは許可証を持っている業者と連携しているかのいずれかが必要です。
このほか免許とは違いますが、火災現場の解体作業の技術は日々進歩しています。同業者間の情報交換や技術向上を目指したセミナーの開催、参加などに積極的か否かも優良な業者を見極める大切なポイントといえるでしょう。
まとめ
火事に遭った建物の解体費用は、住宅の広さやタイプ、火災状況によって異なるものの、約100万~500万円が相場です。解体費用には、数種類の費用が含まれているため、費用の内訳を把握すれば業者の見積もりが適正かを判断できます。
解体費用は、基本解体費用や人件費、産業廃棄物処理費などがあります。解体費用を安く抑えるには、火災保険を利用するほか災害見舞金などの補助制度を利用するのもよいでしょう。
いかがでしたか?住宅火災はそこに住む家族にとって、人生最悪の体験ではありますが、公的支援とともに、この業界で実績を積む優良な業者のサポートによって、再建の道は開けています。決して簡単な道ではありませんが、悲観しすぎる必要はありません。被災後に心の余裕が戻ってきたら、必ず近隣住民を一軒ずつ訪ね、お詫びしてください。今後、解体作業で悪臭や騒音でご迷惑をかける旨を事前に知らせておくことが大切です。
火災物件の解体後は、新築・売却も視野に
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