所有する空き家で火災が発生すると、近隣への延焼や損害賠償、火災後の対応など、さまざまな問題が生じます。自分が火を出したわけではない場合でも責任を問われるのか、加入中の火災保険を利用できるのか、不安に感じる方もいるでしょう。
空き家は人の目が届きにくく、建物や設備の異常にも気付きにくいため、日頃の管理が重要です。当記事では、空き家火災における所有者の責任や主な出火原因、火災保険、予防方法について解説します。
1.空き家で火災が起きた場合所有者は責任を取る必要がある?
空き家で火災が発生して近隣へ延焼しても、所有者が損害賠償責任を負うとは限りません。失火責任法では、過失による失火について、失火者に重大な過失がある場合を除き、民法上の不法行為責任を負わないことが原則です。そのため、通常求められる管理を行っていた場合は、所有者の賠償責任が認められないことがあります。
一方、漏電の危険を把握しながら設備を修繕しない、敷地内の可燃物を放置するなど、著しい管理不足がある場合は、重過失などを理由に責任を問われる可能性があります。第三者による放火や自然発火など、所有者が直接の出火原因ではない場合も、管理状況と被害との関係によって判断されます。また、建物の設置・保存上の欠陥が原因であれば、民法上の工作物責任が問題となるケースもあります。
法律上の賠償責任を免れた場合でも、近隣への説明や謝罪、見舞いなど、道義的・社会的な対応を求められることがあります。日頃から巡回や設備点検、可燃物の撤去、防犯対策を行い、適切に管理することが重要です。
2.空き家で火災が起きる原因には何がある?
空き家で火災が起きる原因には、放火やタバコのポイ捨て、漏電などがあります。ここでは、空き家で火災につながりやすい主な原因について、それぞれ詳しく解説します。
2-1.放火
空き家火災の原因として特に注意したいのが放火です。消防庁が公表した2025年の概数によると、全国の総出火件数は40,783件で、放火は2,392件、放火の疑いは1,649件でした。放火単独では出火原因の第5位ですが、両者を合わせると4,041件で、最多のたばこ3,479件を上回ります。
空き家は居住者の目が届かず、異変の発見が遅れやすい建物です。敷地内に枯れ草や紙類、ごみなどの可燃物が残っていると、火を付けられた際に建物や周囲へ燃え広がるおそれがあります。また、窓や扉の破損、無施錠などで第三者が侵入しやすい状態では、建物内部で火を使われ、火災につながる可能性もあります。
2-2.タバコのポイ捨て
タバコのポイ捨てや火の不始末も、空き家で火災が起きる原因の1つです。消防庁が公表した2025年の概数では、たばこによる火災は3,479件で、出火原因の第1位となっています。
空き家の敷地へ捨てられた吸い殻に火種が残っていると、枯れ草や落ち葉、ごみなどへ燃え移るおそれがあります。また、第三者が建物内へ侵入して喫煙し、消火が不十分なまま吸い殻を放置するケースも考えられるでしょう。タバコは炎が見えなくても内部で燃焼が続き、時間がたってから周囲の可燃物へ着火する場合があります。物置に古新聞や雑誌が積まれている、庭の雑草が伸びて乾燥しているなど、燃えやすい物が多い空き家では火災につながる危険が高まります。
2-3.漏電
空き家では、配線や電気器具の劣化・損傷から漏電し、火災につながることがあります。消防庁の資料では、主な発火源として屋内配線や器具付きコード、テーブルタップ、プラグなどが挙げられています。長期間使われていない建物では、被覆の劣化、湿気やほこりの付着、ネズミによるコードの損傷を発見しにくい点が問題です。
通電したまま短絡やトラッキング、接触部の過熱が起こると、周囲の木材やごみへ着火するおそれがあります。電子レンジや冷暖房機、充電式電池など、建物内に残された機器も発火源になり得ます。2025年の建物火災では、電気機器2,541件、配線器具1,619件、電灯電話等の配線1,160件が報告されています。
3.空き家の場合火災保険の加入が難しくなる?
空き家は、住宅向けの火災保険では加入できない場合があります。火災保険は建物の用途や使用状況に応じて引受条件が定められており、商品によっては居住者のいない空き家を補償対象外としているためです。一方、空き家でも一般物件として契約できる商品や、季節的に使う別荘を対象とする商品もあります。
また、居住中に加入した火災保険を継続していても、その後空き家になった場合は注意が必要です。建物の用途や使用状況の変更を保険会社へ伝えず、契約条件と実態が異なったまま火災が起きると、契約が解除されたり、保険金が支払われなかったりする可能性があります。保険料を払い続けているだけで補償が維持されるとは限らないため、空き家になった時点で契約内容を確認しましょう。
4.空き家から火災を発生させないための対策方法
空き家から火災を発生させないためには、可燃物の撤去や侵入防止、電気・ガスの停止などが重要です。ここでは、所有者が取り組みたい4つの対策方法を紹介します。
4-1.建物の周囲に燃えやすいものを置かない
空き家の周囲には、枯れ草や落ち葉、木くず、新聞、ごみなどの燃えやすいものを置かないようにしましょう。これらが放置されていると、タバコの火や放火によって着火し、建物へ燃え広がるおそれがあります。特に、軒下や物置の周辺、道路から手が届きやすい場所は注意が必要です。
庭木や雑草は定期的に手入れし、郵便受けにたまったチラシも回収してください。隣家との境界付近も確認し、風で可燃物が集まっていないか点検しましょう。建物内にも段ボールや布類などを残さず、火種が近づいても燃え広がりにくい状態を保つことが重要です。
4-2.施錠や定期的な巡回で侵入を防ぐ
空き家への第三者の侵入を防ぐため、玄関や窓、勝手口、物置などは施錠しましょう。鍵や窓ガラスが壊れている場合は修理し、敷地へ入りやすい場所には柵や門扉を設けることも有効です。また、定期的に現地を巡回し、窓や扉の破損、不審な足跡、吸い殻、ごみの放置などがないか確認してください。
郵便物やチラシがたまっていると、不在であることが周囲に伝わります。こまめに回収し、必要に応じてセンサーライトや防犯カメラを設置するなど、管理されている状態を示すことが放火や火の不始末の抑止につながります。
4-3.電気・ガスの供給を止める
空き家を使用する予定がない場合は、電気やガスの供給を止めておきましょう。電気が通ったままだと、劣化した配線やコンセント、残された電気機器の異常から、漏電や発熱が起きるおそれがあります。ガスも、配管や器具の劣化によって漏れが生じる可能性があります。
電気は分電盤のブレーカーを落とし、必要に応じて電力会社へ利用停止を申し込みます。ガスについても元栓を閉め、ガス会社へ閉栓を依頼してください。ただし、防犯設備や定期的な換気などで電気を使う場合は、必要な回路を確認した上で、設備の点検を行うことが重要です。
4-4.管理が難しい場合は手放すことも考える
空き家の管理を継続することが難しい場合は、売却や解体などによって手放すことも検討しましょう。遠方に住んでいる、体力や時間に余裕がない、修繕費の負担が大きいといった事情があると、巡回や清掃、設備点検が行き届かなくなるおそれがあります。
管理不足の状態が続けば、放火や漏電による火災だけでなく、倒壊や不法侵入などの危険も高まります。まずは不動産会社や自治体の空き家相談窓口へ相談し、売却、賃貸、解体、相続人への引き継ぎなど、建物の状態や立地に合った方法を検討することが重要です。
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空き家で火災が起きた場合、失火責任法により所有者が必ず損害賠償責任を負うわけではありません。ただし、可燃物や劣化した電気設備を放置するなど、管理状況に重大な問題があれば、責任を問われる可能性があります。放火やタバコのポイ捨て、漏電による火災を防ぐためにも、定期的な巡回や施錠、可燃物の撤去、電気・ガスの停止を行いましょう。管理の継続が難しい場合は、売却や解体なども選択肢となります。
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